あお内科・内視鏡クリニック
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コラムCOLUMN

2025.07.16(水)

🪲『ニジイロクワガタと、“見守る”こと、“見つけ出す”こと』

こんにちは。あお内科内視鏡クリニックの青木です。
 
最近、わが家に新しい仲間が加わりました。
 
その名も――ニジイロクワガタ。
 
 
 
ご存じの方もいらっしゃるかもしれませんが、
 
光の加減で緑や青、赤などさまざまに輝く、まるで自然が生んだ宝石のような昆虫です。
 
事のはじまりは、わが家の長男のひとことでした。
 
「パパ、どうしてもニジイロクワガタがほしいんだ!!」
 
目を輝かせて熱く訴えてくるその姿に、
 
思わず私は言いかけました。
 
「そんな簡単に!生き物を飼うってことはだね――!」
 
…と、説教モードになりかけたのですが、
 
その時ふと、自分の中に湧きあがる“ちょっとしたときめき”にも気づいたのです。
 
「こんな不思議な輝きを放つ生き物が、家にいたら…ちょっと素敵かもしれない。」
そう思ってしまった時点で、すでにもう半分決まっていたのかもしれません。
 

 
とはいえ、“命を預かる”ことは簡単なことではありません。
 
そこでまず、図書館に行ってクワガタの飼い方の本を何冊も借りてきて、
 
長男に読ませ、飼育方法をしっかり理解しているか確認することにしました。
 
「エサは?湿度は?冬はどうする?メスの取り扱いは?」
 
こちらも本気です。
 
彼なりに一生懸命読み込んで、
 
ちゃんと答えられるようになったのを見届けたうえで、
 
「…よし、じゃあ誕生日プレゼントってことでな」と、
 
ついに我が家にニジイロクワガタを迎え入れることになりました。
 
 
 
先日、オスとメスが無事に交尾を終え、
 
今、メスは静かに、産卵中です。
 
昼間も夜もほとんど動かない。
 
時おり、土の中に潜ってはまた出てきて――
 
なんとも言えない“使命感”をまとった佇まい。
 
観察していると、こちらまで自然と呼吸がゆっくりになります。
 
「ちゃんと育ってるかな…」
 
「今はそっとしておこう」
 
「変化があったら、静かに環境を整えてあげよう」
 
そんなふうに、静かな観察を続ける日々。
 
実はこれ、医療の現場にも通じるものがあると、ふと思ったのです。
 
 
 
👀 “見守る”ということ
見守るとは、手を出さずに、信じて、待つこと。
 
無理に変えようとせず、
 
相手の力を信じて、必要なときだけそっと手を差し伸べる。
 
患者さんが回復に向かっているとき、
 
その力を信じ、焦らず付き合うことも、私たち医療者の大切な仕事のひとつです。
 
 
 
🔍 けれど医療には、もうひとつの視点もあります。
それは――
 
「見つけ出すこと」。
 
わずかな違和感や小さな変化。
 
患者さん自身が気づいていない“サイン”。
 
数字や画像にはまだ出ていない体の声。
 
そうしたものを、知識と経験と感覚で見つけ出す。
 
ときには、何気ない会話のなかから拾い上げる。
 
この“気づく力”も、医療者に欠かせない力です。
 
 
 
クワガタの産卵と、医療行為。
 
一見まったく別物のように見えて、
 
「そっと見守る」と「鋭く見つけ出す」――
 
この両方のバランスが大切だという点では、どこか似ている気がします。
 
健康も、命も、
 
いつも派手に語られるものではなく、
 
静かなところで、確かに育まれているもの。
 
私たちも、その変化に寄り添いながら、
 
必要なときにしっかり力を発揮できる存在でありたいと思っています。
 
そして今日も、
 
飼育ケースの前で「動いたか…?」と息をひそめる院長がひとり。
 
そっとフタを開けて、そっと閉じています。